15×24 link one

新城カズマ15×24 link one せめて明日まで、と彼女は言った」(集英社スーパーダッシュ文庫)を読みました

「サマー/タイム/トラベラー」でSF星雲賞を受賞後の第1作!だそうです。

2005年12月31日の東京を舞台に、
高校2年生の〈徳永準〉くんが、ネットで知り合った謎の人物〈17〉に誘われて一緒に自殺を試みようとするものの、
計画の詳細は知らされず、当日に〈17〉からの連絡待ちという状態の中、携帯電話を紛失してしまい、
その際に入力途中だった遺書メールが送信されてしまったために、
「自殺予告メール」が受け取った同級生を介して伝播していき、各人が徳永くんの自殺を止めようと奔走してみたり、あるいはまったく別の意図で行動していたり、そもそも「自殺予告メール」とは関係ないものの、たまたま〈徳永準〉くんと接点ができてしまったり、と、それぞれの糸が微妙に絡まり合っていく…、
といった感じのあらすじで、
〈徳永準〉くんをはじめ、17歳(大半は高校2年生ですが、通学していない人もいたりして)の人たち、1巻終了時点で13人の一人称視点が折り重なって紡ぎ上げられるお話です。

帯には、『TOKYO・15人の24時間漂流記』とあるので、
現段階では正体不明の〈17〉の他にもう一人増えるのでしょうか…

一人称で語られる人物以外にも、それぞれに関わってくる人々がいるので、既に20人近い人物が登場しているはずですが、
各々、個性的というか、バラエティ豊かなので、案外、人物が混乱しないで済んでいるあたりは、
作者の人の書き分けが優れているのでしょうかね。

女性陣は、わりと、身体的な特徴付けもあって、くっきりと差別化されているように思います。

が、一方の男性陣は、二人ばかりぶっ飛んだ方もいるものの、概ねフツーの男子高校生の区分に含まれる範囲で、…えーと6人?が、それぞれ別個の価値観で行動しているというのは、なかなか読み応えがあります。


複数の視点が交錯することで、それぞれが別個の生活を持っていることを描きつつ、
お互いの内面のすれ違いが描かれたりもして、
物理的にも、ウロウロと移動する〈徳永準〉くんと、微妙なところでニアミスしてみたり、
事件とは関わりないところで意外な接点ができたり、
更には、依然として姿を見せない〈17〉の正体が気になったりと、
山手線や中央線あたりを軸に、いろいろとダイナミックに動き回るのも楽しめたりします。


そんなわけで、全6巻らしい物語は始まったばかりですが、
同時発売だったlink two もはやく読まなくちゃ、なのです。