Boichi「Boichi作品集 HOTEL」、講談社

五つの短編と、描き下ろしの shortSF 四編が収録されています。

アーサー・C・クラークに捧げられているという、至高のSF作品集です。


HOTEL -SINCE A.D.2079-」

南極に建設された「ホテル」の支配人が、果てしなく長い年月の間に体験する、環境の変化のものすごさを描いたお話、なんて書くと語弊があるでしょうか。

この「支配人」は、とある使命のために「ホテル」の維持に努めます。

荒れ狂う外界の圧倒的な描写もものすごいですが、それに適応しようとする「支配人」の手腕も見事です。

そして、「支配人」を支え続ける「想い」が呼び込んだ「奇跡」。

素晴らしい、の一言です。


「PRESENT」

長期の昏睡状態から蘇生できたけど、あと三日しか生きられません、というお話。


「全てはマグロのためだった」

地球で最後に生きていたマグロを食べた少年が、絶滅したマグロを復活させようと奮闘するお話。
もしくは、ネズミの癌治療薬のお話。

こちらも、展開がものすごいのに在り得そうなのが素敵。


「Stephanos」

マリア様のお話かしら?

中身はともかく、最後の絵は、神々しい、とでも言えばいいのでしょうか、圧巻です。


「Diadem」

「北風の女神」さんのお話、カラーです。

神話ちっくな感じです。


全体的な印象としては、もう一回り大きい型がよかったな〜、と思ってしまいます。

せっかくこんなにも精緻で緊密な描写なんですから、大きい画面なら、その迫力はより増幅されると思うのですが、どうでしょう。