Fate/Zero 1

虚淵玄Fate/Zero 1 第四次聖杯戦争秘話」(TYPE-MOON BOOKS)を読みました

全4巻のうち第1巻です。

TYPE-MOONのゲーム「Fate/stay night」の舞台である第五次聖杯戦争の10年前、朧気な輪郭しか語られていなかった第四次聖杯戦争を克明に描き出す、公式の外伝です。


第五次で活躍することになるあの人やらこの人やらの若々しい姿を見ることができます。


軸となるのは、Fateシリーズを通じて、顔であり象徴であるヒロイン・セイバーさんです。

ただ、あとがきによると、Fate/stay night でのハッピーエンドが約束されているが故に、本作では悲劇的な結末を迎えるとのこと。

具体的には、征服王と英雄王にいぢめられるとかなんとか…

不穏な空気が漂いまくりです。


第五次の他のヒロイン、遠坂凜さん、間桐桜さん、イリヤスフィールさんもチラチラと登場したりしています。

が、そんな第五次を知っている人のためのファンサービス的なお話なのかというと、まったくそんなことはなく。

本作単独でも、十二分に熱く楽しめる物語になっています。


そもそも聖杯戦争とは、何でも願いの叶う願望実現器である「聖杯」を魔術師同士で奪い合う、というものなのですが、特殊なルールが存在します。

聖杯戦争に参加できるのは、聖杯によって選ばれた七人の魔術師に限られ、「サーヴァント」と呼ばれる英霊を召喚することになります。

英霊とは、時間を越えて語り継がれるような神話や伝説や物語の登場人物です。

たとえば、アーサー王であったり、アレキサンダー大王だったり、ギルガメッシュ王だったりするわけです。

ちょうど、ファイナルファンタジーシリーズの召喚魔法のようなイメージでしょうか。

そんな英霊たちが、「セイバー」「ライダー」「アーチャー」といった「クラス」に振り分けられて、人格と肉体を備えて現界することになるのです。

伝説の英雄たちによる時空を越えたバトルロイヤル!

興奮しないわけがありません。

1巻の段階でいきなり、7人のうち5人が一箇所に集まってぶつかりあうという、血湧き肉躍る熱い展開となっています。


一方で、英霊たちを使役する「マスター」となった魔術師たちも、一癖も二癖もあるような濃い人ばかり。

おまけに、第五次に比べて年齢が高めな分、正面突破な熱血展開とはほど遠い、陰謀だの術策だのがひしめいています。

第五次が、メディアの都合やらで、(いちおう)学生さんが主役の「ボーイミーツガールもの」のような面を持ち合わせていたのに対して、
こちらは、ハードボイルドとでもいうのでしょうか、より「大人」の、おやじくさい、しっとりとした、影のある、落ち着いた雰囲気の頭脳戦も楽しめます。


視点は各陣営それぞれから描かれるので、謎とか隠し事のようなものはあまりありませんが、
既に確定している結末へ向けて、どのようなドラマが展開されるのか、セイバーさんの身になにが起きるのか、物語に引き込まれます。