T・Pぼん【スペシャル版】第1巻

藤子・F・不二雄T・Pぼん」【スペシャル版】(潮出版社)第1巻を読みました

未収録作品を加えた全3巻の復刻版です。


この作品のT・P(タイムパトロール)は、
ドラえもんなどの作品に出てくるようなタイムマシンを悪用する時空犯罪者の取り締まりとは別に、
全世界全時代を通じて不幸な死に方をした人を、歴史を変えない範囲で助けようという組織です。

…とはいいつつも、舞台となるのは大抵、歴史的に有名な場所や時代、事件だったりするわけですが…

某「世界ふしぎ発見」や「その時歴史が動いた」的な、歴史ミステリー風味のお話が展開されます。



PART 1:消されてたまるか

主人公の並平凡(なみひら ぼん)くんが、ひょんなことから事件に巻き込まれて、T・P隊員となるまでのお話です。

導入部ということで、いろいろ説明的ではありますが、
あえてショッキングな事件を淡々と処理するT・Pの仕事ぶりを示すことから始めて、
杉の木を軸にタイムトラベルをしてみせた上に、
鎌倉時代やらフタバスズキリュウやらといったサービスが入って、
さらにタイムパラドクスの説明もさらりと為されているという、
盛りだくさんの第一話です。

今後パートナーとなる先輩T・P隊員リームさんの性格までよくわかります。

機械いじりをする女の子って素敵だな〜、とか。


PART 2:見ならいT・P

前半はお得意のタイムパラドクスネタを交えて、T・Pの装備やら規則やらといった設定が紹介されます。

後半は、太平洋戦争直後の東京での人命救助です。


PART 3:ピラミッドの秘密

このあたりから、本格的に歴史ミステリー要素が表に出てきます。

ここでの舞台は、エジプトのピラミッド建設現場。
ロマンです。

このお話は、昔、テレビで観た記憶があって、その時はよりドラマティックな場面があったりしてドキドキした覚えがあります。

それに比べると、原作はちょっぴりあっさり風味でしょうか。


PART 4:古代人太平洋を行く

ぼんくんが歴史に関わることになる、重要な場面が描かれます。

一方で、T・Pの任務は、紀元前のミンダナオ沖での救助です。

が、この救助対象の人、本来は亡くなるはずだったのではないのかしら?とか考えると、ちょっぴり疑問も残ったりします。


PART 5:魔女狩り

タイトル通りの、ちょいと残酷で凄惨でグロテスクで刺激的な描写のあるお話です。

T・Pぼんでは、時々この手のドギツイ表現が出てきて驚かされます。


PART 6:白竜のほえる山

西遊記です。
孫悟空は出てきませんけど。

白竜の場面は、まさに白竜!という大迫力です。

そして、ブタさんリームが素敵過ぎます。

それにしても、ドラえもんのパラレル西遊記、F先生バージョンを読んでみたかったです。


PART 7:暗黒の大迷宮

クレタミノタウロスのお話です。

闇の中から浮かび上がる巨牛の不気味さ、
威圧的なまなざし、
獰猛で力強く躍動的なフォルム。

緊迫感に満ちた戦闘場面は圧巻です。


PART 8:戦場の美少女

太平洋戦争中の沖縄が舞台です。

空戦を背景に、T・Pの任務の苛酷さ、冷酷さが語られます。

無難な美談に仕上がってはいますけど、いろいろと考えさせられる、考えるべきお話だろうと思います。


PART 9:妖狐、那須高原に死す

妖狐・玉藻の前のお話です。

漫画の題材としてわりとよく見掛ける印象がありますが、ちゃんとした殺生石伝説は知らなかったりします


時代背景やら登場人物の説明が簡単にしかされていないので、たぶん、原典を知ってることが前提になっているようなお話な気がします。


PART 10:バカンスは恐竜に乗って

恐竜時代です。

T・P隊員は一年に一度、仕事を離れて好きな時代の好きな場所へ行けるということで、休暇旅行です。

いろんな恐竜さんも良いですが、
とにかくリームさんの衣装が気合い入ってます。

ぼんくんは何にも考えてなさそうなんですが、
リームさんは、描写は少ないものの、いろいろ複雑な感情を抱えていそうなんですよね〜

ぼんくんの部屋のベッドでくつろいでたりする姿とか、なんだか見ていて楽しかったりします。


PART 11:OK牧場の近所の決闘

F先生の大好きな西部劇ものです。

残念ながら、OK牧場の元ネタは知らないのですが…


手前の人物の足の間に向かい側の人物が入る構図の反復がおもしろいです。



…というところで以下続刊となりますが、
巻末には年表と世界地図が掲載されていて、
これで、歴史も地理もぱーぺきです。