ハローサマー、グッドバイ

マイクル・コーニイ(山岸真=訳)「ハローサマー、グッドバイ」(河出文庫)を読みました

某いちごタルトや某トロピカルパフェと同じ、片山若子さんによる表紙が素敵な一冊です。

裏表紙の紹介文をまるまる引用すると、
『夏休暇を過ごすため、政府高官の息子ドローヴは港町パラークシを訪れ、宿屋の少女ブラウンアイズと念願の再会をはたす。粘流(グルーム)が到来し、戦争の影がしだいに町を覆いゆくなか、愛を深める少年と少女。だが壮大な機密計画がふたりを分かつ……少年の忘れえぬひと夏を描いた、SF史上屈指の青春恋愛小説、待望の完全新訳版。』
です。

さらに、巻頭の『作者より』からも引用すると、
『これは恋愛小説であり、戦争小説であり、SF小説であり、さらにもっとほかの多くのもの』
です。
『舞台は異星人の住む惑星であり、そこにはひとりも人類がいない』
のですが、
『作中の異星人は人間型(ヒューマノイド)であり』、『人間と同じような感情や弱さに動かされて』います。


この、人間型ではあるけれども地球人とは別の生物であるということが、お話の肝だったりするわけですが、それはまぁおいといて。

以下、ネタバレ


このお話は、紹介文にもあるように、ドローヴくんとブラウンアイズさんの恋愛物語というのが、いちおう真っ当な読み方だと思います。

内気でおとなしそうに見えながら、積極的で強かで蠱惑的なブラウンアイズさんの魅力に圧倒されたりします。

ある意味、ライトノベルやえろげのテンプレートのような印象さえ感じます。


が、一方で、もう一人の女の子リボンさんをヒロインとした、いわゆるNTRものとしても読めるのではないかと思います。

リボンさんは、勝ち気で自信に満ちていて、はじめはドローヴくんは相手にもされていませんでしたが、
『リボンが困っているときに助け』たり『悲しいときにそばに』いたりと、イベントをこなすようにフラグを立てて、距離が縮まっていきます。

このあたりは、ブラウンアイズさんが自分で作中で言うように、特別なイベントらしいイベントが発生しないブラウンアイズさんと対照的です。


が、このお話はブラウンアイズさんルートが確定しているので、リボンさんとは次第に離れてしまいます。

終盤、大人たちの陰謀に翻弄されて、過酷な運命に飲み込まれいくことになるわけですが…

もうちょっとなんとかならなかったのかしら