百舌谷さん逆上する

篠房六郎百舌谷さん逆上する」1巻、(アフタヌーンKC)を読みました。

いわゆる「ツンデレ」こと、「ヨーゼフ・ツンデレ博士型双極性パーソナリティー障害」を患う小学生、百舌谷小音さんのお話です。


ツンデレ」について言及する場合、しばしば視点が問題になることがあります。

?、ツンデレさん本人
?、ツンデレさんが好意を寄せる相手
?、??を外側から眺める第三者
?、神様、すなわち物語の読者
あたりが代表的なものでしょうか。

?の本人の視点では、本人の感情と言動との不一致における葛藤や困惑なども描かれることもありますが、
本人の視点である以上、相手に対する好意は明確なことが多いです。
稀に無自覚な場合もありますが…

?の、ツンデレさんの好意対象さん視点では、ツンデレさんは「ツン」か「デレ」かでしかなく、いずれにせよ表層部分しか見ることができません。
ツンデレさんは不可解で不可思議な存在となります。
が、物語の進行によって「ツン」から「デレ」への転換を迎えることができた際の感激が大きい視点でもあります。

?の第三者の視点では、ツンデレさんの気持ちもあからさまに見て取れます。
この場合、ツンデレさんの感情は手にとるように把握できるのに、その好意は自分ではない誰かに向いている、という複雑な心境を抱くことになります。

?は、そのまんま読者の視点ですので、大抵は???の視点を統合的かつ俯瞰的に持つことができます。
ツンデレさんに「萌え〜」とか無責任なことを言える立場です。


さて、本題の「百舌谷さん逆上する」ですが、この作品では、上記の?〜?それぞれの立場に登場人物が配置されています。

?のツンデレさん本人として、金髪ツインテールの百舌谷小音さん。

?の好意対象さんとして、ガキ大将な竜田揚介くん。

?の第三者として、語り部であり百舌谷さんの奴隷となる、樺島カバ夫くん。

…?と?の立場は、実際は微妙なところもありますが…


そして、?の読者視点として、竜田揚介くんのお兄さんで、「典型的なヲタク」として描かれる竜田昌平さん。

『金髪ロリに思いっ切り踏まれるってのがいかに貴重で幸せな体験なのか』を弟に説く、この竜田兄の存在は、「ツンデレ萌え」の読者像を投影していて、
百舌谷さんの絶望と憎悪を見せつけられた後では、この脳天気で無責任な態度に強い嫌悪を感じると同時に、その嫌悪感が自分に跳ね返ってきます。