犬はどこだ

米澤穂信「犬はどこだ」(創元推理文庫)を読みました♪

開業したばかりの調査事務所<紺屋S&R>に舞い込んだ失踪人捜しと古文書の解読という二つの依頼を、犬捜し専門(希望)の所長・紺屋長一郎と、高校時代の後輩のハンペーが解決するお話です。


二つの依頼を別々に捜査しながら、それぞれが次第に交錯していく様子は、実に見事です。

また、主人公が探偵をやることになった経緯と失踪さんの状況とが重なり合ったり、ハンペーの昔話にも意外な関連があったり、主人公の妹さんが活躍したり、犬にも役割があったり、全部が全部絡まりあって隙間なくびっしり詰まってる印象です。

最後の、急転直下の一捻りがまた効果的で、すとーんと突き落とされた気分でした。



巻末の解説によると、本作を境に、米澤作品に余韻が加わったようです。

ぼくが読んだ中では、犬以前が「氷菓」「愚者のエンドロール」「さよなら妖精」「春期限定いちごタルト事件」、犬以後は「夏期限定トロピカルパフェ事件」なわけですが、
確かに、春期限定と夏期限定とでは、読後の余韻が随分と違うように思えなくもないかなぁ、という感じです。
ただ、読後に尾を引くような余韻のようなものは、犬前後にかかわらず、米澤作品に共通しているようにも思います。

氷菓」に込められた、周囲の理不尽さに対する命名者の叫びだったり、
愚者のエンドロール」での、女帝の手の平で弄ばれているような感覚だったり、
さよなら妖精」での無力感だったり…

夏期限定トロピカルパフェ事件」の最後のやるせなさもあるので、どちらかというと、「春期限定いちごタルト事件」の方が特異な気がしてしまいます。


…と、解説にいちゃもんをつけたところで、本題に戻ります。

本作は紺屋S&Rシリーズの一作目ということで、今後の期待をば。

まずは、開業したての調査事務所に続け様に依頼人を送り込んでくる善意の悪魔・大南さんの更なる活躍が期待されます。
この人のおかげで紺屋S&Rが繁盛してるわけで、感謝しなくちゃいけません。

次に気になるのが、所長さんのチャット友だちのGENさんですね。
失踪さんの重要な手掛かりを調達してくれたり、とても親切な方みたいです。
いつかオフ会でご馳走する日は訪れるのでしょうか。

あと、所長さんが東京でお別れした彼女さんは…望み薄いでしょうか…

そんなわけで、次回作も楽しみです