クロノス・ジョウンターの伝説∞インフィニティ

梶尾真治クロノス・ジョウンターの伝説∞インフィニティ」(ソノラマノベルス)を読みました♪

『至上の愛は時を超えられるのか!?』という、タイムトラベル・ロマンスだそうです

「クロノス・ジョウンター」とは、P・フレック株式会社の開発三課が開発した「物質過去射出機」で、一種のタイムマシンです。

時間軸圧縮理論というのを応用した装置なのですが、過去へ物や人を送り込むことができる代わりに、厄介な副作用があります。

で、この機械を中心とした短編四つと、もうひとつ、時間螺旋理論を応用した開発四課のクロノス・スパイラルの一編、最後にエピローグ的な一編、という合計六編のお話です。


以下、ネタバレ含みます


クロノス・ジョウンターの最大の特徴は、その副作用である、リバウンド(?)です。

作中では引き戻されるとか弾き返されるみたいな表現ですが、
時間を圧縮して過去へ逆上るため、過去へ長時間とどまることができずに、
元の時間よりも遥か未来へと弾き飛ばされてしまいます。

この仕組みが、お話を劇的に盛り上げます。

事故や病気で失った大切な人を救うために過去へ向かっても、一緒の時間を過ごすことはできなくなってしまいます。


以前の日記にも書いた、新城カズマさんの「サマー/タイム/トラベラー」の中で、《タイムトラベルの最重要観念は『二度目の機会(セカンド・チャンス)』にある》というような記述があります。

過去を変えたい、という普遍的なテーマが、このクロノス・ジョウンターでも強く描かれているように思います。

が、同時に、前述した副作用のために、過去を振り返るだけでなく、未来への希望をも感じることができるのが、画期的で、見事で、素晴らしい点だと思います。


さて、ようやく内容ですが、
まず、吹原和彦さんと野方耕市さんは、シンクロ率が高くて困りました。

あの微妙な距離感が、なんとも切なくて歯痒くてもどかしくていたたまれなくて、どうにも…嫌いじゃないです。

布川輝良さんのお話は、香山さんが好い人でした。
ひどい話です


鈴谷樹里さんのは、時の神様の気紛れでしょうか?
よく覚えてないのですが、「夏への扉」の逆みたいな感じですかね?

秋沢里志さんは、難しいですねぇ…
藤子F短編の「影男」が同じような題材なわけですが、お年寄りの『その一時』にかける執念が、ものすごいです。


ともあれ、ハッピーなのは好いですね